さよなら ロック
実家に行きさえすれば
ロックは元気を取り戻す気がしてましたが
実際に目にしたのは、すでに呼吸もおぼつかないほど衰弱しきった姿でした
高度の悪性腫瘍、肺を含む全身への転移で、経口栄養摂取は全くできない状態
おそらく急に元気がなくなったこの1ヶ月よりもずっと前から彼は病と闘っていたのでしょう
人知れず
ロックは母の悪いがんをすべて引き取ったかのようでした
安楽死という決断が正しかったかはわかりません
けれど永遠の眠りについた彼の表情は、息が止まりながら苦悶していた時よりずっと穏やかでした
家族はみなそれぞれ無言のまま帰宅
誰がなにを打ち合わせるでもなく
ケージを解体し掃除機をかけるなど、犬小屋と呼ばれた家を片付けていきました
名残を惜しんでそのままにしておけば、母が一人になったあとよけい泣いてしまう気がしたから
最後に長姉が毛布にくるまれたロックと帰宅すると
本当にただ眠っているだけのような姿に「実は起きるのでは」なんて気持ちすら覚えながら近づくと
いつものあたたかな息がなく、ああ現実なんだなと
それでもどこか嘘のよう
ただおだやかな、安らかな寝顔
家族の輪の中でうたた寝しているときのよう
思い出は尽きず
想いは果てず
後悔は数知れず
けれどそれ以上に何万倍も
たくさんの幸せをもらったことが胸に押し寄せてきました
いつでも味方でいてくれた
いつも見守っていてくれた
いつもまっすぐに信じてくれた
無条件にそばにいてくれた
必要としてくれた
私はいったいどれだけ応えられたんだろう
ロックはうちにきてよかったんだろうか
わからない、でもその最期のとき
東京から、名古屋から、会社をズル早退したりしてまで
きょうだいはみんなかけつけました
みんながロックを大好きだったから
他人がなんといおうと
私たちにとっては最高の相棒でした
今は、こんなところで大切なロックとのあれこれを羅列したくありません
家族で話した結果、ご遺体を埋葬もしないことになりました
母も来年には定年を迎え、雪かきのない土地への引越が可能になります
子供たちはみな嫁ぎバラバラ
心の中にならどこへいってもずっと一緒だから、と
14年前に15才で逝った先代犬ゴンのときと同じく、直近の数年の狂犬病鑑札を家族で分け合いました
ほんのわずか、浮いていた毛を小指ほどの袋にいれました
庭で自由に暮らしていたゴンの首輪は、束縛の証として燃やしましたが
ロックの首輪は、家族と在ることが何より幸せだった絆のシルシ
11才の誕生日プレゼントの首輪は最後に会えなかった父が、やせてしまって最後にしていた首輪は子供たちの中でもっとも長く過ごした私がもらいました
そしてタマシイは一番好きな母のそばにありながら、ときどきみんなを訪ねてくれるでしょう
12才の誕生日まで、あとちょうどひと月の9月20日
朝からの天気雨で空気が浄化され、穏やかに晴れた午後の、その夜でした
星が見えていた
きっとちゃんとロックの星もまたたいているでしょう
今朝、猫のマイケルが相棒を探しています
K太も「わんわん?」と、いぶかるようす
ふたりとも、随分面倒みてもらったもんね
ロックと呼ばれた、
フィドラーオブラブリーハートランドJP
私は多分、彼以上のいのちには一生めぐりあえない気がします
少なくとももうしばらくは
だいすきだよ
ありがとう
お疲れ様
いつかまた会えたら、バナナと牛乳をお弁当に
桜並木の見えるあの川へ遊びに行こう
たくさん走って、たくさん笑おうね
その日まで、今はさよなら
1枚目:生前の最後の姿
2枚目:K太誕生後初めて帯広に泊まりに来た日
3枚目:虹の橋を渡ったロック
2014.09.21 | | コメント(0) | トラックバック(0) | あれこれ